ぬるま湯につかる

地方都市に暮らす30代薄給会社員の株やら暮らしのちょっとした記録

退職届の記録

本日、いつも通り昼過ぎにのほほんと出社してきた社長に退職届を出した。これで二度とあの会社に足を踏み入れることはない。

本当は内容証明郵便で退職届を送りつけたい気持ちもあったが、私物を放置して退職するのはゆとり会社員としてもさすがによろしくない気がしたし、自分のPCの検索履歴を消したかった(履歴を消したい気持ちの方がはるかに大きい)。

「転職 デザイン 求人」などとずいぶん前から職探しをしていた形跡やブログを書いていた痕跡、職場でひどく腹が立った時に「ぐちったー」で呟いていたとバレてしまう証拠は消しておこうじゃないかと考え、足取りも重く出社したのだ。

某つぶやく系のSNSアカウントは面倒になり消してしまったので、ぐちったーのおかげで料金に見合わないレベルの画像修正や、恐ろしいほど適当に丸投げされるので意図を汲み取るのが難解すぎる指示書が手元に来ても心の平穏を取り戻せた。

チーフが出社し、朝一番で退職の件について聞かれたので「許す限り最短で辞めたい」という旨を伝えた。弊社の雇用契約書を確認した際「2週間前に伝えること」と書いてあったし、法律でも2週間。どうやらチーフも退職を考えているそうだ。まあ私の方が先に辞めてしまうのでどうだっていい。それが嘘でも本当でも。

有給は20日残っていたので出社して社長に退職届を提出次第、荷物をまとめて有給消化でこの会社とはおさらばしてやろうと連休中に決めていた。チーフや他の制作の方にも、急に退職手続きを行う総務の方にも大変申し訳なく思うし、自分でも社会人としてあるまじき身勝手な行為だと理解しているつもりだ。

しかし円満退職などするつもりは毛頭ない。連休中、頭を冷やせば穏やかな気持ちで退職できるだろうかと休みに入る前に思ったのだがその気配は全くなかった。むしろこの2年10ヶ月間の彼らの言動を思い出すたびに苛立って仕方がなかった。

「立つ鳥あと濁さず」といういかにも真面目な日本人らしい素敵な諺もあるが、立つ鳥あと濁しまくって辞めるのだ。

ひとまず引き継ぐ仕事は校正のアポ取りと雑誌の自分の担当枠。人様に余計な仕事を増やしてしまい大変心苦しく思う。しかし私の担当区分を引き渡したとしても残業しなければいけない量ではない。仕事なんてこれくらいなもので引き継ぎなんて1時間もあれば終わる。もともと複雑な案件はこの職場にはない。残すは自社ホームページの管理も担当だったが、htmlやcssの知識が全く無くてもちょっと調べればやっていけるつくりだし、どうにか残った人で頑張ってねということで。

社長は「デザインなんて外注に出せばいいから」と大口を叩いたのでどうにかするだろう。おそらくケチって外注に出さない確率90%、社長の提示する料金の安さに請け負う会社がない確率9%、うっかり請け負うものの、のちに喧嘩別れ1%と想像している。「外注は融通が効かないからさ〜」などとほざく姿が想像に容易い。

そのあとは自分のPCのデータ整理とブラウザのキャッシュ削除。就業時間中にブログをかけるほど暇だし、そんなクズ社員(私)が在籍する会社だ。弊社のレベルはお察しレベル。

それはさておき、うっかりキャッシュを消し忘れて、会社のPCにパスワードを残すわけにはいかない。前職時代、前任者がブラウザのキャッシュやお気に入り登録を消して退職しなかったので、前任者が書いていたと思われるブログを読んでしまったことがある。彼女はこんな気持ちで辞めたのかとか、日常生活を垣間見てしまい、知り合いの心の内をこっそり見てしまって気が引けた。

最後に私物と不要な書類の仕分け。もともと3年経ったら辞めるつもりだったので会社に置いている私物は少ない。捨てる書類を捨て、私物のペンやデザイン雑誌、仕事に使えそうだと思って集めたリーフレットやパンフレットのファイルをリュックに詰め込むだけ。

そんなことをしているうちにお昼を過ぎ、ようやく社長が出社したので退職届を出した。

もちろんポケットの中にiPhoneのボイスメモを起動させて忍ばせてあるし、不測の事態に備えてiPodのボイスメモも待機させておく重装備で挑んだ。今日のために両ポケットが膨らんでも違和感のないスカートを履いてやったわ(ドラマの見過ぎ)。

そんな重装備にも関わらず「ひとまず受理します」の一言で終わったターン。「退職願」ではなく「退職届」なので、ひとまず受理しようがしまいがこちらの意志は固いんだ!とは思ったものの、小心者なのでブログではやたら饒舌なくせに社長に一言言うことすらできなかった。

退職届を社長に提出するミッションはクリアしたので、素知らぬ顔して帰宅。

「午後から有給に入るので、今までお世話になりました〜」とすっとぼけて昼休みに荷物をまとめて立ち去る時は、退職届を出したらとっとと立ち去ってやるわと決めていたものの、社会人7年目だというのにこんな子供じみた振る舞いをする自分にも嫌気がさしてきた。

年齢的には後輩を指導する年齢なのにとか、友人や前職の同期は1つの会社で長く頑張っているのに私はすでに2社目を退社してしまった、などと現実が重苦しくのしかかるのだ。

世間一般的に見て自分はなんて非常識な振る舞いをしているんだろうと自転車を漕ぎながら考えたが、この退職の一連の流れに1番驚いているのは何より私自身でもある。一応クソみたいな会社だろうと常識的に辞めていこうとは思っていたのに。

小さな頃から「真面目だね」と事あるごとに言われ続け、真面目と言われるのが嫌だった程度には真面目なはずなのに。きっと真面目系クズというジャンルに部類されるのだろう。

そういえば昨日連休が終わる悲しみなどと書いたが、私は明日から終わりの見えない連休に入るのだった。終わりの見えない連休のほうがだいぶ悲しみが深いが、今週は連休の続きをぐだぐだ楽しみ、だらだらと余韻に浸ろう。テレビで見た天気予報ではしばらく雨が続いている。ひとまずそう決めた。